一章 未完の新兵器

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 あの仮面の二人が、例の仮面の組織の人間だったのか、それとも、彼らを模倣した何者かがゼノビアから差し向けられたのか、それともまったく関わりのない第三者なのか、その結論はまだ出されていない。  もっとも疑わしい仮面の組織についても、いまだ詳細が掴めずにいる。  しかしながら、このピンポイントすぎるタイミングで襲撃されたことを考えれば、敵はアルディス軍の動きをある程度把握していたに違いない。  その諜報活動を可能にするためのは、組織的な自力が必要となる。ゼノビア正規軍ではないにしろ、ゼノビア軍がバックにあるという線が濃いのかもしれない。  そうなると、アルディス内部に彼らのスパイが紛れ込んでいるという可能性も、疑わなくてはならなくなる。  何にせよ、アルディスとしては、この事件はゼノビア反攻への腰を折られたような形だった。戦力的にも手痛い結果となったことはいうまでもない。  なにより、アルディスの持つ神器は、これで二つ目が彼らに失われたことになる。  もっとも、ヒメツルを奪った仮面の男と、今回の仮面の二人組が同一組織の人間だという確証はないが、それを疑うほうが可能性は高いだろう。  加えるなら、ユキの手にしていた『ヒメツル』が神器であるかどうかの正式な結論は出ていない――。  それについては、もはや気にするべきではない。失われたものは戻らないと割り切るべきだった。 『ヒメツル』が神器であろうとなかろうと、アルディス国に残された神器はこれで、オールティストン一族が保有する『空笛(クウテキ)』だけとなったのだ――。  
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