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「レジーナ様……」
ユキは彼女に手のひらを合わせて、深々と頭を下げた。
ハンスもまた、倣うようにそうした。
神徒だとか戦争だとか、そんなことはとりあえず除外して、とにかくユキを救ってくれたことに感謝した。レジーナが、そしてユキが、二人で決めたこととはいえ、いくら祈りを捧げても感謝しきれない。
ハンスが目を開けたとき、ユキの姿が消えていた。
視線を動かすと、ユキは少し離れた場所で、こちらに背を向けて立ち尽くしていた。
ハンスは自分の軍服を脱ぎ、上着をレジーナの遺体にかけると、立ち上がってユキの元へ歩いた。
「ユキ……」
ユキは――泣いていた。背中越しでもそれがわかった。
いとも簡単に、気持ちがわかるなどとはいえないが、それでも常識的な範囲で、彼女の気持ちは理解はできるつもりだった。
自分のために犠牲となったレジーナへの敬愛と感謝が、そうさせたのだろうと思う。
ユキはやっばり、昔のユキのままだった。
ブレイバーであっても、非情にはなりきれず、合理的に割り切ることもままならない、昔の優しいままの女の子だった。戦場でも涙を流してしまうような、そんな優しい女の子なのだ――。
たとえばシェイラにいわせれば、そんなユキはパラディンとしての資質に、疑問符がつくのだろう。それでもいい。仮にそうであっても、ユキにはやはり、変わらないままでいてほしかった。
ハンスは後ろから、ユキの身体を抱き締めた。それ以上に、今の自分にできることはないと思った。下手な言葉をかけても、逆にユキを惑わせるだけのような気がした。
ユキの身体は柔らかかった。想像していたよりもずっと。子どもの頃の彼女のイメージに引っ張られていたからだろう。
これが大人の女性の身体なのか――。
新鮮な感覚と、そしてユキの温かさが伝わってくるようで、離れることができなくなった。
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