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「……うん。やめられない。目を背けられない」
つかの間を切り裂いて、ユキはいった。そのままハンスの胸に顔を埋める。
「私はもう……」
ユキの言葉が続かない。
いったい何に迷っているのだろう。
「戻れない」
「ユキ……?」
そんなとき――。
「ここだ! この近くだ」
唐突に、建物の外のほうから、何やら人間の大きな声が聞こえてきた。複数人いるようで、言葉をかけあっている。
まさか、敵か?
ゼノビア兵だろうか。
レジーナの放った試作型ラグナロクによって、彼らの九十九パーセントは殲滅されたはずだ。しかしやってきたのが、残る一パーセントである可能性は否定できない。
ハンスは息を潜めた。
「この教会だ!」
彼らはこの建物に何かを見いだしたらしい。偶然か必然か。ここにいることがバレてしまったのか。
教会の扉が開けられようとしている。
「ここにレジーナ様の反応がある!」
それで、ほっとした。どうやら、考えすぎだったようだ。
レジーナに『様』をつけるのは、アルディスの人間に他ならない。話の内容から察すれば、アルディス軍の部隊がが神徒の救助にやって来た、と捉えるべきだろう。
しかしながら、それは叶わないことだ。神徒レジーナは自らの意志で、その人生を終えた――。
もっとも、ユキを助けるという選択をしなかったら、結果はどうなっていたのか未知数だ。
レジーナ自身はここで命が終わるというようなことをいっていたが、虚言だった可能性も否定はできない。
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