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顕暦八七四年、残秋の月、三日――。
神徒レジーナの死は、ほとんど発見から間を置くことなく、アルディストンの軍事省に伝わり、その翌日には早くも全世界に向けて発表された。
去る、顕暦八七四年、仲秋の月、二十五日――。
開戦から四十五日目。
アルディスの神徒レジーナが、国際的に正式に没したと認定された日付である。
これによって、三大国家の間で定められた『三国臨時不可侵協定』に従い、戦争は再び、この日からちょうど六ヶ月間の休戦に入ることとなった。
次に開戦するとしても、最短で半年後の、顕暦八七五年、仲春の月、二十五日ということになる。
そして化神の一人を失ったアルディスは、この半年間で、次なる神徒を選定し任命しなければならない。
けれど、自体はそう簡単なものではなかった。
次期化神候補の問題より先に、アルディス軍のブレイバーは、未曾有の戦力難に陥ろうとしていた。
試作型ラグナロクが使用されたアルデウトシティでの戦いを主として、死者および行方不明者は多数に上っている。その中には、次期アルディス軍幹部候補でもある有力人物も含まれていた。
まずは、パラディンだけでなく、ブレイバーすべての頂点に立っていた、ベルトラム・ファルンゼ・ジョンストンが、その一人だ。
彼もハンスと同じく、アルデウトシティでの戦いに派遣されていた。
ラグナロク発動の際には撤退行動をとっていたはずなのだが、現在は行方不明となっている。
調査でも遺体が見つからなかったため、事後の処理は軍の規定に従って行方不明という扱いになった。このまま数年間、行方不明状態が続けば、やがては死亡という形に書き換えられることとなる。
それだけではない。
ベルトラムに次ぐ、パラディン次席との呼び声が高かったシェイラも、同じく行方不明となっていた。
彼女については、ハンスも最後の姿を目撃している。もっとも命を落としたその瞬間を確認したわけではなかったが、部隊のしんがりを勤めていたということもあり、逃げ遅れた可能性は十二分にあった。
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