五章 休戦期間

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 どうやら、試作型ラグナロクの効果範囲は、シャーロットの試算をはるかに上回っていたらしい。  その実際の効果範囲に則って考えれば、ハンスが最後に顔を合わせたあの場所からでは、いくらシェイラといえども逃げきるのは困難となる距離だったようだ。  とはいえ彼女もまた、遺体が発見されていないため、便宜上は行方不明という処理になる。  行方不明というのはかなり希望的な扱いでもあるのが実際だ。あのラグナロクの爆発に巻き込まれれば、人体など跡形もなく消え去ってしまってもおかしくはない。  死者、行方不明者の中で、特筆すべき実力者はこの二人くらいだったが、その他にも総勢二十三名のパラディンが、死者および行方不明に該当している。  これだけでも、アルディス軍の戦力はかなり削られているといえた。  敵の主戦力を奪ったとはいえ、その代償は大きかった。  そして――ハンスにとって、それ以上にショックが大きかったのが、ルカもまた、行方不明者リストに加えられてしまったことだ。  あの捉えどころがなく、何でもしたたかに切り抜けてきたようなルカが、まさかこんなところで命を落としたなどと、思いたくもなかった。  計算高いルカのことだから、明日にもひょっこりと帰還しそうな期待すら持ってしまうが、そういう非現実的な希望は捨ててしまうべきなのだろう。  基本的に、一度行方不明者リストに乗ってしまった人間が、後々無事帰還したなどのいうケースはほぼないといってもいい。行方不明というのは、おおよそ死亡扱いのようなものなのだ。  ルカだけではなく、ブレイバーナイトもまた、十八名の死者、行方不明者を生んでしまった。  開戦から数えれば、もうすでに七十名から八十名程度まで、死者数は到達してしまっているだろう。もともといたナイトの人数が半分になろうかというくらいの消耗だった。
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