五章 休戦期間

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 何にせよ、アルディスが神徒を失った意味はとてつもなく大きい。  戦力としてもそうだが、絶対的な存在感についてもそうだ。今のアルディスは、片翼を奪われた鳥のようなものなのだ。国のバランスがこれ以上ないほどに、大きく崩れているといっていい。  それによる休戦も、アルディスにとってはメリットにもデメリットにもなる。  半年という期間は、アルディス軍の戦力を整備するには有意義な時間ではあるが、それはゼノビアにとっても同じなのだ。この半年間で新たなる自走兵器を製造されたとするならば、レジーナの死は無駄に終わってしまったに等しくなる。  とにかくこの半年間は、心して過ごさなければならないだろう。休戦だからといって、浮かれてなどいられない。  けれど――考え方しだいでは、またとない休息のときでもあった。  兵士といえど、働き続けるばかりではパフォーマンスは上がらない。休むことも立派な仕事のひとつだ。  せっかくの時間なので、ユキと過ごす時間を増やしたいと、ハンスは願っていた。  なのだが、アルデウトシティから戻って以降、どうもユキのようすがあまり芳しくなかった。  怒っているとか、苛立っているとか、多忙であるとか、そういうわけではないのだが、少しだけ距離を置かれているような気がするのだ。  ユキのほうが、何かを遠慮しているとでもいえばいいのだろうか。とにかく今は、あまり積極的に関わることのできない状態になってしまっていた。  アルデウトシティからの帰投後に、ユキとアルディス軍の間であった質問について聞けていないのには、そういった事情もあったのだ。  なんとなく、あの日の出来事がタブーのように思えてきて、ハンスは今でも口にできずにいる。  だから、せっかくできた時間だったのだが、どうも思い通りにうまくはいかないらしい。  最終戦でアルディスがようやく盛り返したというのに、どうにも明るいニュースが少ないのは気のせいだろうか。  いや、事実、その通りなのだろう――。
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