一章 未完の新兵器

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※※※  顕暦八七四年、仲秋の月、十九日――。  開戦から三十九日目。  そろそろ本当に、悠長なことをいってもいられない情勢となってきた。  そして同時に、悠長に研究を重ねている、深く探求を重ねている、そんな時間的余裕もなくなってきたのだ。  ここ魔研――『魔法研究開発部門』にも、神徒レジーナの対ゼノビア『首都防衛AL作戦』への参戦の情報は即座に伝えられた。  これは魔研にとっても、そしてその魔研の研究者の一人であるシャーロットにとっても、けっして芳しい伝達ではなかった。  なぜならば、神徒レジーナは、シャーロットが魔研に所属するよりもずっと前から、魔法の研究開発にも深く関わっていた。  新魔法の実用化に助力していたことはもちろんのこと、既存の魔法の強化や改造、更新――そういった課題に対しても、たびたびその知見と能力を提供してくれていた。  それだけではない。  マナを操るためのエネルギーといえる魔力は、そもそもは化神によってもたらされたものなのだ。魔法技術の根幹には、いつの時代も化神の存在があったのである。  その魔力を半永久的に得られる設備が、『シェイド』という形となって実用化されたのは、レジーナよりもずっと先代の話だ。  その当時の化神が操るエネルギーを研究し、人工的に供給することを可能としたのが、『シェイド』のシステムなのである。  そういった過去の化神たちの功績は、近年でも形を少し変えて、脈々と引き継がれている。  近年でいうならば、魔力を蓄えるための魔装具である『フィラクテリ』の、保有魔力容量の増加と質の向上などのマイナーチェンジには、レジーナも深く関わっているのだ。  だから、アルディスにおける魔法技術の発展の裏には、実はいつの時代でも化神の存在があるといっていい。そう、神徒レジーナだけでなく、魔卿ジェルドも、魔法の研究には縁が深いのだ。
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