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「神徒が選ばれる過程を経験するのは、わたしも初めてです。どういう選出をするんでしょう?」
国の情勢について、物知りなところを発揮するソフィでさえ、これに関しては知識がないらしい。それくらい、歴史的な事態なのだ。
「レジーナ様は……どれくらい神徒に就いてたんだっけ?」
レジーナがいつからその立場にいたのかをハンスは知らない。見た目の年齢でいえば、二十代前半くらいに見えるが、実際はもっと上のはずだ。
「たしか、十年くらいでしょうか。わたしが子どもだった頃、ということは覚えてますが、もっと長いかもしれません。調べれば公式記録が残っていますが……」
ソフィもやはり、幼い頃のことまでは、詳しく知っているわけではないようだ。
シャーロットのほうは、たしかその頃に戦争孤児としてアルディストンに移住してきたはずだが、まだエルフィンストンの一族に引き取られてはいなかったはずで、だから詳しい情報は聞かされていないだろう。
仮に、レジーナが二十歳の若さで神徒に就任したとして、十年の任期を終えていたとすれば、三十歳を越えていたことになる――。
「魔力適齢期を越えても、あれだけの能力を発揮できるわけか、神徒ってのは……」
個人差はあるにしろ、マナや魔力を扱う能力というのは、年齢にとても忠実な結果が出るというデータがある。普通であれば、ハンスたちのような十代のほうが、マナや魔力を扱うことに優れているはずなのだ。
「神の力を与えられると、肉体の衰えにも強くなるらしいですからね。その影響と考えるべきでしょう。化神というだけに、神を二分した存在ですわ」
なるほど、そういう作用があるのか――。
衰える速度が遅くなると考えれば、たしかに辻褄は合う。
さすが博識だ。しかしシャーロットは、なぜか渋い顔をしていた。
「――と、これくらいにしておきましょう。亡くなった方を話題にするのはやっぱり悲しいものですから」
シャーロットは目を伏せて、複雑そうな表情をした。
少なからず、責任を感じているのかもしれない。
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