五章 休戦期間

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「そうだな、悪い」 「いえいえ」  特にシャーロットの場合は、普段からレジーナとの交流があったのだ。配慮に欠けていた。 「それよりも、わたくしには少し気になることがあります。これは……ソフィにも関係のあることですわ」 「え? わたし?」  指名されると思っていなかったようで、ソフィは元々大きな瞳をさらに丸くする。 「神器のことですわ」 「神器、か……」  忘れるような出来事ではないながら、ここ最近は優先順位の関係で、頭の隅に追いやられていたことだ。  アルデウトシティでの決戦前――戦争が佳境になっていたときに、アルディスはまた、あの仮面の男の集団からの襲撃を受けていた。そして、神器のひとつである『コクヨウ』を失っている。 「あとアルディスに残ってる神器は――」 「そう。オールティストン一族の『フウテキ』ですわ」  ぴくりと、ソフィの身体が反応をした。 「まだわかりませんが――」  と前置きをしてから、シャーロットは続ける。 「神器を収集しているのがゼノビアの人間だった場合、この休戦というタイミングで再びしかけてくる可能性はありますわ。もとより強奪行為は犯罪ではありますが、あれは戦争とは関係なく非公式に行われた行為ですので、三国の協定は関係ありません。よって、彼らが動く可能性は十分にあります。――もっとも、ゼノビアの仕業かどうかは不明ですが」 「まあ、ゼノビアならやりかねないけどな。やつらがノアを統一しようというなら、七つの神器を手元に集めたいと思う心理もわかる」  そのほうが、より完全な形で世界を征服できるだろう。ゼノビアはそういう国だ。やるときは、とことんやる。  けれど現状では、あの仮面の人物がゼノビア寄りの人間であるという確証は得られていない。
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