五章 休戦期間

10/46

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
 勝手な推測だが――ゼノビアの人間ではないのではないかと、ハンスは考えている。まったく根拠などないが。 「というわけで、ソフィはちゃんと、気をつけておくんですよ!」  まるで母親が娘を諌めるように、シャーロットはいった。 「わ、わかってるよ! ――オールティストン一族も、警備を強化しているところだから。最後の神器を奪われるわけにはいきません!」  神徒も神器も失うとなれば、アルディス軍もいよいよ厳しい立場に置かれることになる。  アルディスの神器は『クウテキ』のみ。  イーヴァインは『オーラクリスタル』、ゼノビアは『オリハルコン』と『ミュラルジルール』を所有している。  行方不明となっているのが、『コクヨウ』と『ヒメツル』。  残る最後の一つは、完全に所在がわからない状態だ。  ただ、仮に神器を集めたにしろ、それをどう軍事力に利用するのかといえば、それはわからない。古代のマナが封印されているという、眉唾物の噂はあるが。  神器にはまだ、謎が多いのだ。 「七つ目の神器のこと、二人は知ってるか?」  ソフィとシャーロットは同時に首を振った。 「そちらは専門外なので」  シャーロットはひと言、潔く告げた。 「わたしも知らないです。たぶん知っているとしても、アルディスの上層部の人だけだと思います」  つまり、貴族でもトップ中のトップか。  その世界にもなると、表沙汰にならない闇の情報が行き交っているに違いない。積極的に関わりたくもないところだ。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加