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実は、神器に古代のマナが大量に封印されているという噂には続きがある。多大なる量のマナはそれだけで強大なエネルギーとなるので、それを正しく活用できるのは、化神だけだといわれているらしい。
ただ、それも怪しい情報だ。
なぜなら、神器を集めるからには、それ相応の理由があるはずだからだ。
つまり、あの仮面の組織は、何かしら神器を活用する手だてを見いだしているともいえないだろうか。
たとえば、その古代のマナを軍事力に利用するだとか――。
伝承を信じるなら、ノアの均衡を破りかねないほどの、強大な力だったはずなのだ。
試作型ラグナロクという、近代の最強魔法を体験したハンスとしては、それ以上の力など、想像したくもなかった。
そこで、学園内に鐘の音が鳴り響いた。午後の座学や実習な終業を示すための鐘だ。
「――さて、わたくしはそろそろ研究に戻りますわ……」
さも当たり前のことのように、シャーロットはそういって伸びをした。
時間的には、大抵の職員たちが業務の終わりを迎えるはずだが、どうやら魔研の研究者にとって、終業時間はただの通過点でしかないらしい。
「わたしたちも、戻りましょうか。せっかく時間があるので、今のうちに図書館でいろいろと勉強しないと」
ソフィはソフィで、相変わらずの勤勉さだった。
さてじゃあ、自分は何をしよう――。
考えようとしたところで、シャーロットの鋭い声が割って入ってきた。
「それよりも――せっかく束の間の休息ができたわけですから、二人でお出かけでもしてみては?」
「ええっ!?」
即座にソフィが反応した。例によって、目を白黒とさせた。
突拍子もない提案をしたシャーロットは、ソフィを意味ありげな目で眺めている。
それを受けたソフィは、ちららちらりと、ハンスの表情を窺うように視線を投げてきた。微妙に挙動不審気味になっている。
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