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「そ、そんな……わたしなんて……。で、でもっ、もしハンスくんが迷惑じゃなければ……」
なんだろう、期待感のこもった目線だった。
そういう反応をするということは、社交辞令とかではなく、その気がないわけではないようだ。
思えば、中央エリアの拠点で再会したときにも、ソフィからの誘いで、二人で出かけることになったのだった。
ここに来るまでは、まともな友人すらいなかったので、慕われていると思うと、素直に嬉しくなる。特にソフィの場合は、何かと危なっかしいところがあるので、世話を焼きたくなるのだ。
アルディストンの街にしても、開戦したこともあって、前に街を歩いたのがいつだったのかもよくわからなくなっているくらいだ。
少しくらい、軍人としての生活から離れてみるのもいいのかもしれない。
本当なら、ユキといっしょに街を歩きたかったが――。
だからといって、誰がいいだとか、そういう順位づけをするつもりはない。
「そうだな。ソフィ、久しぶりに街を案内してくれないか?」
「ほ、ほんとにっ、いいんですかっ!?」
ソフィは目を見開く。白黒させそうになりながら。
「ああ。だってアルディストンの案内は、ソフィが一番だろ?」
お世辞ではなく紛れもない本音だ。
それでソフィはようやく、落ち着きを取り戻したようだ。
「はいっ! それはもう、喜んで!」
その後ろで、シャーロットがにんまりと、してやったりというような笑みを浮かべていた。
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