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さすがに何度もこのパターンを経験して、何一つ学習しないハンスではない。予兆を感じたときから、本能的に準備はできていた。
ハンスは腰を落として、ソフィの身体を受け止める体勢に入った。できる限り、イレギュラーが起こり得ないように、慎重に。
が――。
やはり、ソフィの持つ不運というなの才能は、一筋縄ではいかなかった。普通に抵抗なく倒れてくれれば問題なく受け止められたはずなのだが、そうなるまいとして、ソフィは身体を無理に動かした。
その結果――。
「――っと!?」
ソフィはハンスに真正面からぶつかった。
まるで狙ったかのように、人間の弱点でもある正中への体当たりだった。さすがにそこへのダメージは想定していなかった。
身体がよろけて、ハンスのほうが先に尻餅をついた。その上に、ソフィがのしかかってきた。
衝撃に一瞬、思考が飛んだが、やがてすぐに我に返った。
「……! これは、もしや……」
ハンスは恐る恐る、身体をもたげようとした。小柄とはいえ、ソフィの重量を全身に感じながら。
なんと、ソフィはちょうど、ハンスに馬乗りになるように倒れていた。
まさにちょうど、股がるようにして。
なぜだ!?
「なんでこっちを向いてるんだ!?」
ということは、ぶつかった衝撃で前方宙返りでもして、俺の上に乗ったということか?
普通では考えられない。
そんなアクロバットなこけかたなんて、認められない。
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