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「うう……ううう……」
ソフィは納得がいかないように唸っていたが、やがて観念したのか、ゆっくりと立ち上がった。
そして上品な仕草で、ワンピースの汚れをはらう。
何だかソフィのほうも、少し熟れた感じなのは気のせいだろうか?
最初に見たときなんかは、お嫁に行けないといっていたのに、今日なんて、わりと淡々としているようにすら思える。
ハンスも立って尻をはらった。服装には頓着していないため、汚れたとしてもあまり気にはならない。
ふう、と小さく吐息をついてから、ソフィはいった。
「取り乱して、すみません……。――えっと、ずいぶんと待たせてしまいましたか……?」
「いや、ついさっき来たところだよ」
待ち合わせの定型文ともいえる回答をした。実際、それほど待ってない。
「それならよかったです。――さて、じゃあ、今日はどこに行きましょう?」
相変わらず破壊力のある、期待の上目遣いソフィはしてくる。まるで試すような目線に見えた。
本当ならここですぐに気の利いたことがいえればいいのだが、あいにくハンスはアルディストンの街をまだよく知らない。ただ、一ヶ所だけ、今日は訪れたいところがあった。
「すぐにじゃなくていいんだけど、商業区に行っときたいんだけど、どうかな」
「商業区――あ、新しい武器ですか?」
察しがいい。機転の利く娘だ。
レヴォルツが折れてしまったことは、ソフィもすでに知っている。
「そう。すぐに買えるわけじゃないけど」
レヴォルツの代わりになるものがあるのか、それだけでも、確かめておきたかったのだ。あれは師から受け継いだ、少々形状も特殊な片手剣だった。
全く同じはないにしても、近いものがあるといいのだが。
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