五章 休戦期間

17/46

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「うう……ううう……」  ソフィは納得がいかないように唸っていたが、やがて観念したのか、ゆっくりと立ち上がった。  そして上品な仕草で、ワンピースの汚れをはらう。  何だかソフィのほうも、少し熟れた感じなのは気のせいだろうか?  最初に見たときなんかは、お嫁に行けないといっていたのに、今日なんて、わりと淡々としているようにすら思える。  ハンスも立って尻をはらった。服装には頓着していないため、汚れたとしてもあまり気にはならない。  ふう、と小さく吐息をついてから、ソフィはいった。 「取り乱して、すみません……。――えっと、ずいぶんと待たせてしまいましたか……?」 「いや、ついさっき来たところだよ」  待ち合わせの定型文ともいえる回答をした。実際、それほど待ってない。 「それならよかったです。――さて、じゃあ、今日はどこに行きましょう?」  相変わらず破壊力のある、期待の上目遣いソフィはしてくる。まるで試すような目線に見えた。  本当ならここですぐに気の利いたことがいえればいいのだが、あいにくハンスはアルディストンの街をまだよく知らない。ただ、一ヶ所だけ、今日は訪れたいところがあった。 「すぐにじゃなくていいんだけど、商業区に行っときたいんだけど、どうかな」 「商業区――あ、新しい武器ですか?」  察しがいい。機転の利く娘だ。  レヴォルツが折れてしまったことは、ソフィもすでに知っている。 「そう。すぐに買えるわけじゃないけど」  レヴォルツの代わりになるものがあるのか、それだけでも、確かめておきたかったのだ。あれは師から受け継いだ、少々形状も特殊な片手剣だった。  全く同じはないにしても、近いものがあるといいのだが。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加