五章 休戦期間

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「じゃあ、はじめに行ってしまいましょう。武器屋は閉店も早いですし」 「へえ、そうなんだ?」 「はい。職人さんは、朝も夕も早いですから。たぶん彼らは、日が暮れる頃には仕事を切り上げて、酒場に出かけるんだと思います」 「ああ、なるほどなあ……」  とてもイメージしやすい情景だった。屈強な男たちが、仕事の疲れを忘れるために、グラスを傾ける姿が脳裏に浮かぶ。  二人は歩き始めた。商業区までならば、会話をしながら歩くのにはちょうどいい距離だ。 「ハンスくん、あらためてお疲れ様でした。おかげでアルディスは、今もわたしたちの国であり続けてます」  なんとも改まったねぎらいの言葉だった。  これはソフィの、というよりは、アルディス貴族としての感謝の言葉のように聞こえた。 「いや、そこまでいわれると恐縮するな……。別に俺個人の働きなんて微々たるものなんだし。軍全体で、精一杯やった結果だよ」  微々たるもの、という表現すら、誇張かもしれない。  実際にどれだけ役に立ったのか、いや欠片ほどの役にしか立っていなかったのかもしれない。それでも、『首都防衛AL作戦』の勝利に少しでも貢献したといってもらえるなら、救われる。 「微々たるなんて……そんなことはありませんよ」  そんなことはありません、とソフィは強調するように繰り返した。 「ハンスくんは、アルディス軍がなぜ、できる限り人命を失わない戦いをすることを重視しているか、知っていますか?」  唐突な設問だった。  学のないハンスには難問だ。
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