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「それこそ、アルディスの教えのとおりじゃないか。たとえ戦場にいなくとも、ソフィはソフィなりに、自分の戦場で軍を支えてたんだ。それってつまり、教えでいう、軍が一つになってるってことだろ?」
即座に受け売りをするのは恥ずかしかったが、これが隠すことのない本音だ。治療魔法が戦況にどれほどの影響力を持っているか、そんなこと、わざわざ口にして説明するまでもない。
ソフィは一瞬だけ目を見開いてから、今度はすぐにそれを細めた。
「ハンスくんは……やっぱり、優しいですね……」
「いや……当たり前のことをいっただけだよ」
うっとりとするソフィの表情は、なぜ
かハンスの心を刺激する。
庇護欲とでもいうべきか――無条件で守ってやりたくなってしまうのだった。
ソフィはふるふると首を左右に振る。
「当たり前のことをいってくれるから、優しいんですよ? わたしも心の中では、自分がアルディス軍のためになっていると信じています。そうでなければ、厳しい戦場では自分を見失ってしまうと気づきました……。けれど――なかなかそれを自分から口にすることはできません。なぜなら……周りのブレイバーたちは、わたしが軍に貢献していると思っていないからです……」
やはり気になるのは、周囲のブレイバーの目、か――。
特にナイト以上は、無条件で前線に出ているのだから、負い目を感じるのは仕方のないことだ。
「まあ、全員を納得させるのは、な……」
「全員どころか」
即座に、ソフィは切り返した。
「わたしに否定的なブレイバーのほうが、圧倒的に多いと思います。実際にどうかは別にして、そう思ったほうが、そう決めつけたほうが、わたしも楽なんです。ひとを変に疑わなくて済むから……」
「ソフィ……」
それは辛すぎる考え方だった。
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