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ソフィは――こんなことをいう娘だっただろうか?
まだ見えていなかった彼女の本質に、今触れているのかもしれない。
誰が自分の味方で、誰が自分の敵なのか、それを疑いながら、猜疑心を持ちながら過ごすよりは、はじめから全員が敵と思った方がいい――つまるところ、ソフィの言い分はそういうことだろう。
けれど理解と納得はできる。
少なからず、シロガネクラスでもそういう雰囲気を感じることは、当人ではないハンスですらあったからだ。
「でも、ハンスくんの言葉は、わたしは心から信じているんですよ? ――だからこれからも、ずっと……ハンスくんは、わたしの味方でいてくださいね?」
ソフィは冗談っぽくそういった。そして元々小柄な体躯を小さく縮めて、もじもじと身体を動かした。
恥ずかしかったのだろうか。冗談めかしているが、それこそが偽りのない本音なのだろう。
「当たり前だろ。確認するまでもないことだよ。それがアルディス軍の教えならなおさらだ。――いいか、ソフィ。俺たちがやってることは、どっちも正しいんだ。身分や戦う場所に関係なく、皆一人一人が、微力ながら軍の戦力だと、俺は信じてる。だから俺たちは、自分たちの仕事に何も負い目を感じることはないんだ」
少々熱くなってしまったが、ソフィは真剣な眼差しでハンスの言葉を聞いてくれていた。茶化したり敬遠したりすることもなく。
とにかく、ソフィは根っから真面目な女の子なのだ。
そして、ソフィに教えられたからではないが、アルディス軍の指針には、ハンスも素直に好感が持てた。
軍は元々、ある程度統率されたものであるが、それが権力者からの一方的で強制的なものでは、実戦部隊は疑問を覚えてしまうだろう。雑兵なら、なおのことだ。
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