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「戦争は、やっぱりいいものではありません……。あたりまえのことですが……。人間どうしが命を奪い合うだなんて……。そうでなければ、魔法が悪になることもなかったのに……」
魔法が悪になる――。
その表現の意味がすぐにはわからなかったが、ソフィの暗い表情を見たことで氷解した。
ラグナロクのことだ。いや、それよりも、シャーロットのことだ、といったほうが、より正しいのだろうか。
今回の首都防衛戦で死者が増大した原因の一つに、試作型ラグナロクの誤算があったからだ。
直接ハンスの耳に届くことはないが、ソフィは聞いているのかもしれない。魔研にはそれなりの批判が集まっていることを――。
その矢面にいるのが、開発者の一人であるシャーロットなのだ。
先日のシャーロットの疲れた表情には、そういう事情もあったのかもしれない。研究結果の問題と、それによる人間からの批判と。
両者からのプレッシャーが襲いかかっているのだ――。
「そうだな。でも究極魔法の場合は、それも承知のうえだよ。きっとな。シャーロットも、理解して、覚悟してるはずだ……」
もともと戦争における切り札として、そして抑止力として、ラグナロクは開発されたのだ。シャーロットにもその覚悟はあっただろう。
ただ問題だったのは、効果範囲が超過してしまったことだけなのだ。味方に多数の被害者を出してしまったことなのだ――。
シャーロットはそれでもやめないだろう。研究も開発も。ただ、ただ、アルディス軍の勝利のために。ゼノビア軍を――潰すために。
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