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「わたしには、何ができるんでしょう……」
「ん? シャーロットに、か?」
「はい。わたしがシャルできることといえば、会って話を聞いたり、いっしょに過ごしたりするくらいです」
「それで十分じゃないか。たぶんシャーロットもそう思ってるはずだ」
「そうだといいんですけど……」
「はは、そうだよ。俺より付き合いの長いソフィが思うなら、絶対そっちが正解だ。時間って嘘をつかないからな」
「時間、ですか……」
意味深にそういったソフィは、じっとハンスの顔を見つめる。何かおかしなことがあったか。
「ハンスくん、こそ……あの、その……ユキさんのようすは、どうなんですか?」
まさかの、想定していない話題転換だった。
ただ、アルデウトシティでの出来事は、かいつまんでソフィにも話していたので、それを気にかけてくれたのだろう。
「ユキか……」
ふと、ではユキに対して、自分は何ができるだろうと、ハンスは考えさせられることになった。
ソフィのいう、ユキのようす、というのは、他ならぬハンスとユキの近頃の関係性のことを示しているはずだ。
どうも帰還して以来、ユキはあまり元気がないのだ。被害妄想的にいうなら、距離を置かれているようにすら思えてしまう。
それについて思い当たる節はない。
行動や言動を思い返してみても、ユキを傷つけるようなことはしていないつもりだ。
考えられるとすれば――レジーナに対する罪悪感に駈られている可能性がもっとも大きいと推測している。
それかもしくは、上司であるベルトラムとシェイラが、同時に行方不明となったショックだろうか。他にもパラディンの死者の中に親しい相手がいたのかもしれない。
とにかく真実は闇の中だ。少し一人になりたいというだけで、ハンスが何か原因を作ったわけではないと、信じているのだが――。
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