一章 未完の新兵器

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 いや、それは邪推というか、考えすぎだろう。  レジーナとしては、万が一に備えて、安全第一の対策を取ったのだろうと、シャーロットは思うことにした。  自分が死ぬなどということは微塵も考えていないが、しかし不測の事態に陥ったとき、これまで培ってきた研究内容と、自身の身体に眠る化神の秘密が消失してしまうことを恐れたのだろう、と。  そう、彼女も開発に携わってきた、こそが、この戦争の行方を左右するかもしれないのだから――。  そのは、禁忌とされている『レベル4』のそれでもなく、しかし禁術として過去に封印された魔術でもない。  あえて名前をつけるというのなら、『究極魔法』。  究極の、『レベル5』の魔法だ。  この戦争を、もしかすると、そのたった一撃で終戦させてしまうかもしれないほどの強大な威力を誇る、まさに究極の魔法だ。  ひとたび発動すれば、その被害は、机上の計算で導くことは不可能とされている。  いったいどのくらいまで、その効果範囲が及ぶのか、現在のシミュレーションではまだ、ハッキリとした結論が出ていないのだ。  実際シャーロット自身も、自分なりの推測と結論を導き出してはいるが、現実にその通りの現象が起こるのか、いまなお確信が持てないでいる。  最悪の場合――もしかすると、アルディス自身をも、巨大な炎で包み込んでしまうのかもしれない。  街を一つ、消し飛ばしてしまうかもしれない。  大量の人間を、殺戮してしまうかもしれない――。  そんな魔法を、シャーロットは研究している。何年も、し続けている。  そしてそれは、いよいよ完成に近づいている状態なのだ。
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