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たしか伝承では、アイリスとリエスの魂がいくつかに分裂して、その一つがアルディスの化神には宿っているということだったか。
にわかには信じなれないような、お伽話だ。
「今さらだけどさ、化神って具体的に、普通のブレイバーと何が違うのか、ソフィは知ってる? 能力的に優れているのはわかるけど」
以前にも同じような質問をした気もするが、そのときは真剣に聞いていなかったのかもしれない。頭には残っていなかった。
「具体的に、ということであれば、それは化神に選ばれたものにしかわかりません」
ソフィは迷いなくいった。博識のソフィですら、そうらしい。
「一般的にいわれているのは、神の力を授かる、ということですが。もっとも、レジーナ様においては、戦闘能力の飛躍的向上や魔法の独自変化能力、身体強化、マナや魔力への適合性など、さまざまな変化があったようです」
言葉で並べただけでも、反則級の強化に聞こえる。
まさしく神に選ばれた力ということか。
「魔法の独自変化なんて、興味深いな」
「ある意味ブラックボックスですね。いうなれば、化神が扱う魔法はすべてが禁術といえるのかもしれません。それを体験し、体現できるのは、化神に選ばれた者だけです」
そのミステリアスさも含めて、神たる所以というわけか。
その選抜はもう始まっている。現状のハンスには縁のない話だが。
いや、仮に神徒たらしめる実力が自分にあったとしても、志願するのかといわれれば、即答はできない。それくらい、遠く離れた世界の話のように思えるのだ。
いつの日かそこにたどり着く時は来るのかもしれない。けれどそれより早く、この戦争が終結して平和な世界が作り上げられることを、ハンスは願うばかりだった。
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