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とはいえ、ソフィが悪いわけではないので、彼女に余計な気を揉ませてはいけない。
「そうそう。そういうこと。レヴォルツの代わりが必要だからさ」
理由としては十分だし、ましてや嘘でもない。
するとユキは、不満や納得とは違う、少し焦ったような色を表情に浮かべた。予定になかった反応だった。いったい何だろう。
「……へぇ、じゃあ、今日買うつもりなの――?」
「んー、合うものがあれば、だけど」
とはいえ、レヴォルツは汎用品ではない。むしろ特殊な形状をしていたのだ。既製品ではなかなか見つからないのが実情だ。
だからこそ多くの戦士たちは、自分専用の武器を特注したりする。
最終手段としては、ここの親父に製作を頼むことになるだろう。彼ならきっとやってくれるはずだ。問題は金額的な面だけである。
「そっか……」
ユキは思案するように返答する。
「ん? 何かあるのか?」
「ううん。べつに……ないけど……」
それっきり、数秒間の沈黙の時間ができた。
近頃のお互いの関係が微妙であることも手伝って、次にかける言葉が見つからない。
ユキと言葉を交わすことにこれほど苦労する日がくるとは、まるで予想だにしていなかった。
「あ、あのユキさん……。お怪我のほうはもう大丈夫ですか?」
場を取り繕うように、ソフィがいった。これは、おとなしそうな彼女の持つ意外性のうちの一つだ。
ソフィは、ドゥドゥのような敵意を持つ特定の相手を除けば、基本的に対人関係で物怖じしたりしない。初対面だろうと、面識が薄かろうと、しっかりと相手の目を見て、はきはきと喋ることができる。
貴族の娘として、幼少時代から英才教育されているのだろうと思う。
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