五章 休戦期間

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 聞かれたユキは、不思議そうな顔をした。なぜそのことを知っているのか、という表情だ。 「わたしは今回、医療チームに所属していましたので、負傷者の情報がそれなりに入ってくるんです」  ユキの言葉を先取りするように、ソフィは説明した。  さすがは由緒正しき貴族の娘である。訓練されているのか天然なのか、不穏な場をうまくつなぎ止める能力にソフィは長けている。  まあ、べつにハンスにとって不穏でも、二人には不穏というわけではなかったのかもしれないが。 「そうなんだ。――うん、大丈夫です。レジーナ様の治療を受けたから」  足を引きずっていたのが嘘のように、ユキの怪我は快復した。そしてラグナロクによるダメージも。後遺症が残ることもなく、あの短時間で全快してしまったのだ。  まさに魔法のいう意外ない。誇張ではなく、ユキはレジーナに命を救われたのだ。 「レジーナ様の――」  ソフィは息を呑んだようだった。 「どうかしたか、ソフィ?」 「あ、いえ……」  口ごもる、ソフィ。何かを隠したようにすら思えたが、この流れで問いただすべきではない。 「じゃあ、私は行くから。これから学園に用事もあるし」 「そうか……。なんか、相変わらず忙しそうだな」 「まあ、ちょっとね……」  微妙な反応をする。  まただ――。  あの日、アルデウトシティから戻ってきて以来、ユキはハンスと距離を置こうとしている。そう思わずにはいられない。それをまた、たった今感じ取ったのだ。 「休戦したし……今度また、街の案内でもしてくれないかな……?」  ハンスはそういった。  ここで何事もなく、言葉を交わすことなく別れてしまったら、次に会うのがずっと先になってしまうような、そんな嫌な錯覚がしたからだ。
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