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「お嬢ちゃんがライキリを扱う様はこの目でしかと見させてもらったさ。んで、ちょっと話をさせてもらった。その日から、お嬢ちゃんはお得意様ってわけよ」
なるほど。知らないうちに、上手くやってくれていたらしい。さすがはプロの商売人だ。
「でもまさか今どき、小太刀を使いこなせるブレイバーがいるたぁ思わなかったがなあ」
感慨深げだった。
ということは、昔はそれなりにいたということか。
たしかに年々、魔装武器は、その多様性を減少させているように思う。
たとえばミーアが使う魔構機銃などは、アルディス近代武器の代表格だ。しかし十年程前だと、かなり希少な武器だっただろう。当時はまだ近距離武器が猛威を振るっていたのだ。
流行り廃りではないが、時の流れに連れて、時代に合った武器が生み出され、移行していくのだ。
過去はブレイバーに所属していたバジルなら、そのあたりはハンスよりもよく知っているだろう。
「バジルさんも元ブレイバーですよね? 当時は小太刀使いもいたんですか?」
するとバジルは髭面をボリボリと掻きながら、視線を宙にさ迷わせた。
「ブレイバーねぇ。懐かしいな。十数年前か……」
ふっと、唐突に、バジルを包む空気が変化したのをハンスは感じた。
過去を懐かしむような、それでいて戻れないことを悔やむかのような、そんな憂いにも似た雰囲気だった。
「十年前といえば、ゼノビアとの開戦前の、近年では比較的平和だった時代ですね」
ノアの時代背景には一日の長のあるソフィがいった。
「おうよ……。おかげで当時は大成しないブレイバーが多かったわな。かくいうオレもその一人さ」
なぜだろう、心なしか、声の調子も落ちたような気さえする。それほどまでに思い出したくない過去だったのだろうか。
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