五章 休戦期間

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「まあでもな、怪我なんてまだマシなもんよ。魔法を奪われたにしろ、自由と命は残るんだからな。――もっと残酷なのは、を押し付けられて、そのうえ国のために死に急いじまうことさ……」  抗えない運命? 責任?  死に急ぐ? 「――わかっていながら戦死したんじゃあなあ、いくらなんでも救われねえだろ……。まあ、本人がそれで納得してるなら、オレが口出しするようなことじゃないんだがなぁ」  バジルという豪傑そうな男から、こんなにも弱々しい言葉を聞くとは思わなかった。  察するに、怪我をしたルークとは別のその同僚は、何かしらの責任ある立場まで昇格して、そして戦争で命を落としてしまったようだ。  もっとも、これ以上深入りはできないが。  そんな雰囲気ではない。  相手は自分の倍の人生を生きている人間なのだ。おいそれと過去を掘り下げるなど、失礼極まりない行為だろう。  ソフィですら、少し動揺しているように思えた。  まさかバジルとの間まで、こんな湿った空気になるとは想定外だ。何か、話題を転換しなくては――。  と、そこでようやくハンスは、本来の目的を思い出した。 「――えっと、そういえばバジルさん。本題なんですけど、実は先日の交戦で、剣が折れてしまったんです。代わりになるものがないかなと思って」  するとバジルは、さすがというべきか、切なげな顔つきをすぐに封印して、即座に仕事人としての表情に戻った。  それどころか、どういうことなのか、にやりとしたたかな笑みまでもを浮かべた。 「おう、お前さんの武器はたしか、片手の長剣だったよな? 刀身はこれくらいの太さだったか」  バジルは、カウンター背後に吊り下げられたたくさんの剣のうちの一本を指した。  それはいわゆる大剣に属するものだった。あのゼーファスが使用していた剣に近いサイズ感だ。 「いえ、もう少し細いです。同じようなものは――見当たらないですね」  師から託された剣の出どころはわからない。しかしおそらく、二本とない特注品だったのだと思う。ゆえにサイズも特殊だったのだろう。
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