一章 未完の新兵器

10/42
前へ
/310ページ
次へ
 ゼノビアを完全に制圧できる魔法。  そのための究極魔法――。  あの憎きゼノビアを、降伏させるための――そのためだけの魔法だ。  家族を、親族を、友人を、故郷を、すべてを奪っていったあのゼノビアを、完膚なきまでに、完全なる敗北に導くことができるかもしれない、究極の魔法なのだ。  ようやく、シャーロットの長年の悲願が達成される。  その日が近づいている。  今日この日までやってきた研究は、まさにそのためにあったといっても過言ではないのだ。  ゼノビアを滅ぼすため、無念にも命を落としていった、家族や故郷バージャー同胞たちの仇を打つために、死物狂いでやってきたといってもいい。  いよいよその日が来る――。  嬉しくもあり、そして反面、怖くもあった。  そんな危険なモノをこの世界に生み出してしまうことが。  この『究極魔法』が、その後も別の目的を持たされ、利用され続けていくことが――。  シャーロットの想いは、『究極魔法』はただただ、ゼノビアとの凄惨な戦争を終結させるためだけに使用されるものであって欲しい。  そのための戦力の一つとして、開発を続けてきたのだから。  アルディスの勝利にしろ、敗戦にしろ、おそらくこの戦争は、そう長くは続かないだろう――。  しかも現状は、どちらかというと敗北寄りに傾きつつある。  だからこそ、急ぐしかなかった。一日でも早く『究極魔法』を完成させ、すべてを終わらせるのだ。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加