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「少し考えさせてくれないか? そうだな……二週間くらいだ」
「えっ、そんなに!?」
「ん、なんだあ? 別に嫌ならいいんだぜ。オレ様だってお前さんからの依頼だけが仕事じゃないんだ」
妙に強気だった。まあ職人というのは、そういう替えが利かない仕事をしているわけなので、強気にこられるのもわかるが。
そういわれると、渋々でも承諾するしかない。逆にいえば、二週間待てば期待する回答がもらえるかもしれないのだ。
あり合わせの、汎用品の剣を衝動的に買うくらいなら、時間がかかってでも質の高い一品を手にしたい。それくらい、このバジルの腕は信用できるものだと思う。
「わかりました。また、二週間後に来ますよ」
ふふん、とバジルは、してやったりというように、口の端をあげた。
まあ要するに、うまく彼のペースにはめられてしまったわけだ。こうなったら、とことん品質のいい物を作ってもらうしかない。
「じゃあ、また」
ハンスとソフィは、店を出ようとする。その背中に、バジルの声が飛んできた。
「まあそう落ち込むな! なあに、二週間も経つ間にはよぉ、きっといい出会いがあるぜ。立派な武器が手に入ってるだろうさ」
がははは、とバジルは豪快に笑った。
そんな根拠のない幸運を、手放しに信じることは到底できないのだった。
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