五章 休戦期間

38/46

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「少し考えさせてくれないか? そうだな……二週間くらいだ」 「えっ、そんなに!?」 「ん、なんだあ? 別に嫌ならいいんだぜ。オレ様だってお前さんからの依頼だけが仕事じゃないんだ」  妙に強気だった。まあ職人というのは、そういう替えが利かない仕事をしているわけなので、強気にこられるのもわかるが。  そういわれると、渋々でも承諾するしかない。逆にいえば、二週間待てば期待する回答がもらえるかもしれないのだ。  あり合わせの、汎用品の剣を衝動的に買うくらいなら、時間がかかってでも質の高い一品を手にしたい。それくらい、このバジルの腕は信用できるものだと思う。 「わかりました。また、二週間後に来ますよ」  ふふん、とバジルは、してやったりというように、口の端をあげた。  まあ要するに、うまく彼のペースにはめられてしまったわけだ。こうなったら、とことん品質のいい物を作ってもらうしかない。 「じゃあ、また」  ハンスとソフィは、店を出ようとする。その背中に、バジルの声が飛んできた。 「まあそう落ち込むな! なあに、二週間も経つ間にはよぉ、きっといい出会いがあるぜ。立派な武器が手に入ってるだろうさ」  がははは、とバジルは豪快に笑った。  そんな根拠のない幸運を、手放しに信じることは到底できないのだった。  
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加