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人が集まれば、そこには新たな労働が生まれる。こうしてアルディストンは、またさらに発展していくのかもしれない。
アルデウトシティを含めて近隣の都市が再開発されるには、少なくとも数年の時間が必要とされるので、そのうちに首都アルディストンはさらに規模を増すのだろう。
と、物思いに耽っているうちに、ソフィと話すことを忘れていた。というのも、ソフィのほうも先程から、口を開くこともないまはま、静かにハンスの隣を歩いていた。
ハンスは彼女の顔を横から覗いた。
ソフィも何か、思考を巡らせているような表情をしていた。あまり邪魔をしたくはなかったのだが、しかしソフィの場合、こんなときにこれ見よがしにドジっ子ぶりが発動してしまう可能性が高い。
それはまずいことだ。今日はすでに一度、ソフィのあられのない姿を見てしまっている。
「ソフィ、考えごとか?」
するとソフィは、はっとしたように顔を上げた。
「あ……ごめんなさい、わたし……」
「別にいいよ。でも、珍しいな」
ソフィは少し、逡巡したようだったが、やがてこう告げた。
「あの……ユキさん、怒ってましたか?」
「え?」
まるで想定していない方向からの話題だった。
「わたしとハンスくんが二人っきりだったので」
「いや……うーん……怒ってはないとは思うけど」
多少不機嫌ではあったが。
ただまあ、それはよくあることというか、ユキは少しだけ、やきもち焼きすぎるきらいがある。
今になって思えば、ロディの村にいた幼少の頃からそういうところがあった。あの頃から二人はべったりとくっついていたから、そういう独占欲に駈られるのかもしれないが。
今回については、運が悪かったというしかない。
たぶんこういう機会は、これからも何度もあると思う。ユキの欠点の一つくらいに考えていたほうがいい。
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