五章 休戦期間

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「ソフィこそ、ユキのこと気にするなんて意外だな。別にソフィが気に病むことなんてないぞ?」 「あ、はい、それは、大丈夫です……」  ソフィは途切れ途切れにいった。何か、釈然としない点があるような反応だ。 「ハンスくんは、ユキさんとお出かけしたりしないんですか? まだ休戦状態とはいえ、せっかくの貴重な時間ですよ……?」  探るような目を、ソフィはした。二人の関係性に切り込むような鋭さがあった。  ハンスよりソフィは二十センチ近くも身長が低いので、その眼差しは必然的に上目遣いとなる。そうなると、破壊力は一気に増大する。 「うーん、そういう気持ちはあるけど、なんかこの頃、距離を置かれてるような気がするんだよな」  具体的には、『首都防衛AL作戦』の後から。アルデウトシティで救援部隊に発見されて、アルディストンに戻ってきた後からだ。 「そ、そうなんですか……。すみません、変なことを訊いて」 「いや、ソフィが謝らなくても」 「――でも、戦場ではいっしょだったんですよね。な、なにかあったんですか……?」  ソフィの表情は、好奇心を隠しきれていなかった。男女の色恋沙汰でも期待しているのだろうか。こういうところは、年相応の女子なのである。 「思い当たる節はないけど――」  まさかハンスに助けられたことが不満だったとは思いたくない。それはありえないだろう。  ユキはハンスだけでも生きろといったが、お互いに助かるに越したことはないはずだ。  ふと、あの死を覚悟した瞬間のことを思い出した。  そういえばあのとき――ユキに告げたことがあったのだ。  この胸を内を。ユキに好きだと伝えた。ユキも同じだといった。それから――二人は唇を合わせようとした――。  結果的に、その直前で魔法無力化を思いついたことで、初の瞬間はお預けとなったわけだが――あのときのことについて、その後について、ハンスはまだ、ユキと話をすることができていない。
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