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「ソフィこそ、ユキのこと気にするなんて意外だな。別にソフィが気に病むことなんてないぞ?」
「あ、はい、それは、大丈夫です……」
ソフィは途切れ途切れにいった。何か、釈然としない点があるような反応だ。
「ハンスくんは、ユキさんとお出かけしたりしないんですか? まだ休戦状態とはいえ、せっかくの貴重な時間ですよ……?」
探るような目を、ソフィはした。二人の関係性に切り込むような鋭さがあった。
ハンスよりソフィは二十センチ近くも身長が低いので、その眼差しは必然的に上目遣いとなる。そうなると、破壊力は一気に増大する。
「うーん、そういう気持ちはあるけど、なんかこの頃、距離を置かれてるような気がするんだよな」
具体的には、『首都防衛AL作戦』の後から。アルデウトシティで救援部隊に発見されて、アルディストンに戻ってきた後からだ。
「そ、そうなんですか……。すみません、変なことを訊いて」
「いや、ソフィが謝らなくても」
「――でも、戦場ではいっしょだったんですよね。な、なにかあったんですか……?」
ソフィの表情は、好奇心を隠しきれていなかった。男女の色恋沙汰でも期待しているのだろうか。こういうところは、年相応の女子なのである。
「思い当たる節はないけど――」
まさかハンスに助けられたことが不満だったとは思いたくない。それはありえないだろう。
ユキはハンスだけでも生きろといったが、お互いに助かるに越したことはないはずだ。
ふと、あの死を覚悟した瞬間のことを思い出した。
そういえばあのとき――ユキに告げたことがあったのだ。
この胸を内を。ユキに好きだと伝えた。ユキも同じだといった。それから――二人は唇を合わせようとした――。
結果的に、その直前で魔法無力化を思いついたことで、初の瞬間はお預けとなったわけだが――あのときのことについて、その後について、ハンスはまだ、ユキと話をすることができていない。
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