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「ユキさんならきっと、神徒の御心を理解していたはず。彼女に命を救われたなら、なおさらです。なのできっと、ユキさんが気にしているのは、まったく別のことじゃないかと……」
「そうか……なら、いったい何が……」
こうなると、もう直接訊くしかないのかもしれないわけだが。
「――というより、あの……ハンスくんに関わることじゃないんですか?」
と、唐突にソフィは切り出した。
まるで業を煮やしたかのように、その言葉にもまた、彼女らしからぬ鋭さがあった。
「なにか気になることがあるんですよ、きっと。――いえ、気になるというより、悩むようなこと、でしょうか」
そうなのだろうか。可能性はあるが、思い当たる節はなかった。ユキはなかなかそういう弱味を見せてはくれない。
悩み、か――。
近頃では縁のない言葉になってしまった。
それだけ疾風怒濤の日々を過ごしていたのだと思う。戦場で悩んでいては、自分の命すら守れない。
「同じ女の子として、ソフィなら何だと思う? ユキの悩みって」
「そ、それは……」
答えにくそうにする。
「やっぱり……はっきりしてほしい、とか……?」
「え、はっきり?」
「そ、そうですよ! 女の子は不安なんです! たとえ相手の気持ちに確信があったとしても、ちゃんと口にしてほしいんですよ!」
びっくりするほどの剣幕だった、これがあの奥ゆかしいソフィなのだろうかと疑うほどだった。まさか、別人の成りすましということはあり得ないが。
「と、とりあえず、落ち着け、ソフィ」
「――はっ!?」
目を丸くしたソフィは、そのまま赤くなった。
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