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「す、すみません、つい……。でも、やっぱりハンスくんのことで気になることがあるんですよ、きっと。あの顔は、そういう顔でした!」
ソフィは断言する。
「わかるのかよ」
さすがは女の子どうし、というべきか。いや、人間関係において苦労が絶えないソフィだからこそ、感じ取れることなのかもしれない。
「なんとなく、ですよ、ほんとに。――意識するあまり、わたしのほうが思い込みをしているのかもしれないですけど」
「意識? へぇ、ソフィってそんなにユキを慕ってたんだ」
あまり面識はないように思っていたが、戦闘する姿を見たとすれば、わからなくもない。
「へっ? いや、えっと……」
「まあ、仲良くしてやってくれよ。あいつはいいやつなのに、親しい相手はあまりいないみたいだから」
「も、もちろん、ユキさんのことはとても尊敬していますが……でも、慕っているというよりは、むしろライバルなので……!」
そう言葉に力を込める。まさかソフィにそういう対抗意識があるとは思っていなかったので驚いた。
どちらかといえば一歩引いていて、他人を立てようとするというのが、ソフィに持っているハンスの印象だ。
けれどそんなソフィも、戦争を経験して何かしらの心境の変かが訪れているのだろうか。
「あ……す、すみません、この話はもう、このへんで……」
そこで我に返ったのか、申し訳なさそうに顔を伏せた。ソフィが取り乱すというのは珍しい光景だった。
そんなことを思ったときだ――。
「……」
どこからか、気配がした。監視されているような気配が。
会話が途切れたタイミングだったので、気づくことができたのだろう。ただ、具体的にどの方向からなのかはわからない。
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