五章 休戦期間

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「誰かついてきている……?」  ハンスが呟くと、ああ、とソフィはあっけらかんとした声を漏らした。 「それはたぶん、わたしの付き人のジョウだと思います」  ほんの一瞬だけ、何をいわれたのか理解に窮したが、しかしすぐに、その響きに思い当たる節を見つけた。  ジョウ。姓名、ジョウ・アインスフェルト・オールティストン。  久しぶりにその名前を聞いたものだった。ジョウという男は、ソフィの専属執事のような役割をしている、アインスフェルト家の使用人の一人なのだ。  以前、そのジョウからは、戦場におけるソフィの安全を気にかけていてほしいと、非公式にお願いをされていたのだった。大したことはできていないが、あれから何もいわれないということは、一定の評価はされているのだろうと勝手に理解している。 「ジョウはほんとにどこにでもついてこようとするので、いつもやめてくださいといってるんですが――」  頬を膨らませながら、ソフィはちょっと不満げにする。  そういえば、護衛役を頼まれたときも、かなり過保護っぷりを見せつけていた記憶がある。  今日でいうなら、ソフィの下着が見えてしまったあのシーンは、ジョウに目撃されていなかっただろうか。お咎めがないということは、どうやら大丈夫だったらしい。 「でも今は、仕方がないですね……」  ソフィはすくに表情を暗くした。 「仕方がない?」 「はい……。神器の防衛のこともあって、オールティストン一族は今、ちょっと物々しい雰囲気なんですよ。だからそうやって、こっそりと一族の人間を護衛をしてるんです」  オールティストンの『クウテキ』は、アルディス最後の神器になるのだ。過剰になるのも仕方がないだろう。  これまでの経緯を踏まえると、やつらは神器を保管しているオールティストン一族の屋敷へ直接襲撃をしかける可能性が高い。
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