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「誰かついてきている……?」
ハンスが呟くと、ああ、とソフィはあっけらかんとした声を漏らした。
「それはたぶん、わたしの付き人のジョウだと思います」
ほんの一瞬だけ、何をいわれたのか理解に窮したが、しかしすぐに、その響きに思い当たる節を見つけた。
ジョウ。姓名、ジョウ・アインスフェルト・オールティストン。
久しぶりにその名前を聞いたものだった。ジョウという男は、ソフィの専属執事のような役割をしている、アインスフェルト家の使用人の一人なのだ。
以前、そのジョウからは、戦場におけるソフィの安全を気にかけていてほしいと、非公式にお願いをされていたのだった。大したことはできていないが、あれから何もいわれないということは、一定の評価はされているのだろうと勝手に理解している。
「ジョウはほんとにどこにでもついてこようとするので、いつもやめてくださいといってるんですが――」
頬を膨らませながら、ソフィはちょっと不満げにする。
そういえば、護衛役を頼まれたときも、かなり過保護っぷりを見せつけていた記憶がある。
今日でいうなら、ソフィの下着が見えてしまったあのシーンは、ジョウに目撃されていなかっただろうか。お咎めがないということは、どうやら大丈夫だったらしい。
「でも今は、仕方がないですね……」
ソフィはすくに表情を暗くした。
「仕方がない?」
「はい……。神器の防衛のこともあって、オールティストン一族は今、ちょっと物々しい雰囲気なんですよ。だからそうやって、こっそりと一族の人間を護衛をしてるんです」
オールティストンの『クウテキ』は、アルディス最後の神器になるのだ。過剰になるのも仕方がないだろう。
これまでの経緯を踏まえると、やつらは神器を保管しているオールティストン一族の屋敷へ直接襲撃をしかける可能性が高い。
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