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「――それにしても、ユキ、元気になったんだな」
ハンスがいうと、ユキは怪訝な表情をした。少し表現が悪かったか。
けれど、隠す必要のない本音だった。
「何だか最近、そう見えてたから」
「――心配してくれてありがとう。でも、元気がなかったわけじゃないよ。ちょっと、いろいろと考えることがあっただけ……」
そういったユキの表情は、何か重要な決意を秘めたかのようなそれだった。迷いを絶ち切り、確固たる結論を導き出した、威厳のようなものが感じられた。
「そのことも、教会で話をするね。――じゃあ、またあとで」
「おう」
正門でユキとは別れた。
ユキは自分の拠点である、本館へと向かうようだった。
学園内ではさまざまなしがらみがまとわりついてくるため、少し時間を置いてから、ハンスも学園の正門をくぐった。
シロガネの教室に入って、適当な席に着いてしばらくしたところで、ジュリオが満を持したように近づいてきた。よくある日常の一幕だ。
「……なあ、聞いたか?」
しかしながら、ジュリオにしては神妙な面持ちだった。
「何だよいきなり。聞いたって何を?」
いつもの緩い立ち振舞いではないので、少し構えてしまう。
「そうか、まだ聞いてないか」
低く真面目な声で呟く。
ジュリオのこういう雰囲気は珍しい。ということは、あまり良くないほうのニュースだろうか。
「アルデウトシティの瓦礫を撤去する作業中に、ベルトラムさんのガラハドが見つかったらしい」
「ガラハド――?」
「あれ、知らないのかよ? ベルトラムさん愛用の武器、ハルバードの名前だよ。――て、それはいいんだよ。そのガラハドが破損した状態で見つかったってこと」
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