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「それは……つまり……」
その次に続く言葉を、ハンスとジュリオはどちらも発することができなかった。きっとお互いが、相手が発言してくれることを望んでいただろう。
「戦死した可能性が高くなったわけか」
ハンスはいった。不要な探り合いをしても仕方がない。
「……へへへ……はっきりいうな」
ジュリオは冷ややかな笑いかたをする。養子縁組とはいえ、ベルトラムも貴族だったらしいので、思うところは強いのかもしれない。
「まあ、心苦しいところではあるけど、でもみんな、心のどこかで感じていたことだろ」
「はは。さすがはハンス。――けど、そういうことだ。これは戦争だからな……」
ジュリオはどこか、達観したような雰囲気を醸していた。以前の彼とは見違えたといってもいい。
兄であるゼーファスを失ったことを思い出したのだろうか。その経験が彼を幾分か強くしたことはいうまでもないだろう。
「とにかく、そのうち公式発表もあるだろうぜ」
死者の名前は、何かしらの形で必ず公表されることになる。
そしてその遺体の有無に関わらず、戦場で命を失ったブレイバーは、貴族であるなどの特別な理由を除けば、基本的には共同の墓地に葬られると決められている。
ユキやミーアも訪れていた、あの場所だ。
ジュリオの兄であるゼーファスも、貴族でありながらも、バーティストン一族の希望もありそこに埋葬されているのだと聞いた。
ベルトラムの場合は、その遺留品をもって、死亡確認という判断が成されるとすれば、墓標が建てられることになるだろう。
それが共同墓地なのか、ジョンストン一族の土地なのか、という違いはあるにしろ、だ。
しかし――何の痕跡も見つからないまま、生死がはっきりしない行方不明者については、その通りではない。
そういったブレイバーたちは、最悪の場合は行方不明者のまま、期限となる年数を過ごし、その後は死亡扱いとなる。
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