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そもそも、根本的なことをいってしまえば、ナイトやパラディンなど、戦場に出れば関係のないことだ。実力のある者は、階級など関係なく結果を残す。
だからこそ、ミーアにはナイトのままでいてほしい――というのは、やはりハンスの勝手な願望だろう。階級が変われば報酬も増える。地位も向上する。現実的なことをいえば、それだけは紛れもない事実だ。
ミーアに昇格を断る理由などないだろう。
彼女のほうはハンスを、そこまで強く必要とはしていないのかもしれない。いや、していないに違いない。
あっさりと、ここまでの関係性すら、終わってしまう可能性すらある。
あらためて疑問を感じる。
暗黙のルールに存在価値はあるのだろうか?
そう思わずにはいられない。たとえそれが我が儘であったとしても。
「よぉ、ハンス。顔が怖くなってるぜ?」
ジュリオの声がして、我に返った。
「突然どうしたんだ? 自分が昇格するのかどうか、不安なのか?」
「いや、そんなんじゃないけどな」
少し迷いつつも、ハンスは本音を告げることにした。
「たとえばミーアが昇格したとして、そうなるとブレイバーの暗黙のルールで、俺たちの関係も途切れてしまうのかなと思ってな」
それにはジュリオも、普段は緩み気味の表情を引き締めた。
「――そればかりは逃れられないことだ。どうしても回避したいなら、お前もパラディンになるしかないぜ」
「まあ、そうだが……」
それが最善の策のように思えたが、しかし冷静になってみると、必ずしもそうではないことに気づいた。
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