序章

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 おそらく――この戦いによって、アルデウトシティは壊滅状態に陥るだろう。そこで生活する数万人規模の住人たちは、ほんの数日間で、自らの土地と住処を失うことになることは必至だ。  しかしながら、都市の構造を知り尽くしたアルディス側としては、これほどのアドバンテージはない。  よって、多大なる痛みを伴うことは承知のうえで、ここアルデウトシティが戦地として決定された。  それだけアルディス軍も、本気だということだ。  そして、軍の本気度を窺い知れる内容が、もう一つある。  それは、化伸の参戦だった。  女神アイリスと、魔王リエスの魂を宿すともいわれる、国家最大の軍事力――それが化伸という存在だ。  神徒レジーナ。  魔卿ジェルド。  彼らが化神に任命されてから、これは初の出撃命令となるはずだった。休戦前の第一次対戦では、アルディスは最大戦力を行使を見送っていたからだ。  初めて、その力が、世界に示される。  ゼノビア軍の元帥、ヴェイン・デル・レーギオは、アルディス化神と相まみえた経験のある数少ない人物ではあるが、その化神とは彼らの先代のことである。  現化神である、神徒レジーナ、そして魔卿ジェルドの戦闘能力を知る者は、この世界のどこにもいない――。  未曾有の対戦が、今まさに始まろうとしているのだ。  対するゼノビアは、新たに残る三機の自走兵器を投入したという情報も流れている。  ユキはデオグラストの地で、自走兵器のうちの一機である、『クイーン・メリー』を目撃した。  今でもよく覚えている。重厚さと、冷たさすら感じさせた、あの鈍色の兵器を。  あのクラスの兵器が同時に襲いかかって来ることを思うと、心胆を寒からしめるのだ。
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