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「やっぱり、もうすっかり元気になったみたいだな」
とにかく、普段通りに戻ってくれたことが何より嬉しい。
今度はもう、今朝のように怪訝な顔をすることもなかった。ユキは小さく頷いた。
「そう……だね。いろいろ考えて、私なりには整理もついたから」
「そうか」
それはよかった、と、間を持たせるための言葉をつなげる。
とはいえ、もうごまかしたり探りを入れたりする必要もないだろう。それにここは神聖な場所だ。二人の神に見守られる、厳かな場所だ。
何も包み隠すことはない。
「その整理っていうのは、レジーナ様のことなのか?」
その日を境に始まったことだ。この冷戦は。
そう考えるのが普通だった。
「半分はそれで正解なのかな? レジーナ様に救われなかったら、私はこうはならなかっただろうし」
それはそうだろう。もしレジーナの治療を受けていなかったら、ユキはあの場所で終わりを迎えていた――。
一命を取り止めたにしても、ブレイバーとしては死んでいたはずだ。
生かされたからこそ、生じた苦悩だったのだろう。
「レジーナ様が決めたことだから。ユキは堂々と、自分の命をまっとうすればいい――と、俺は思う」
経験していないことに対して、偉そうに意見はできない。あくまでも、ハンスの僭越な想いだ。
「うん……。ありがとう。もちろん私も、そうするつもり」
するとユキは、おもむろに右手に持った物を、ハンスのほうに差し出した。
「これは私からのプレゼント。前にライキリを見つけてくれた、そのお礼と、あとは……誕生日の――ハンス、この間、誕生日だったでしょ――?」
まったく唐突なことで、素直に反応ができなかった。
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