終章

12/21

12人が本棚に入れています
本棚に追加
/310ページ
「やっぱり、もうすっかり元気になったみたいだな」  とにかく、普段通りに戻ってくれたことが何より嬉しい。  今度はもう、今朝のように怪訝な顔をすることもなかった。ユキは小さく頷いた。 「そう……だね。いろいろ考えて、私なりには整理もついたから」 「そうか」  それはよかった、と、間を持たせるための言葉をつなげる。  とはいえ、もうごまかしたり探りを入れたりする必要もないだろう。それにここは神聖な場所だ。二人の神に見守られる、厳かな場所だ。  何も包み隠すことはない。 「その整理っていうのは、レジーナ様のことなのか?」  その日を境に始まったことだ。この冷戦は。  そう考えるのが普通だった。 「半分はそれで正解なのかな? レジーナ様に救われなかったら、私はこうはならなかっただろうし」  それはそうだろう。もしレジーナの治療を受けていなかったら、ユキはあの場所で終わりを迎えていた――。  一命を取り止めたにしても、ブレイバーとしては死んでいたはずだ。  生かされたからこそ、生じた苦悩だったのだろう。 「レジーナ様が決めたことだから。ユキは堂々と、自分の命をまっとうすればいい――と、俺は思う」  経験していないことに対して、偉そうに意見はできない。あくまでも、ハンスの僭越な想いだ。 「うん……。ありがとう。もちろん私も、そうするつもり」  するとユキは、おもむろに右手に持った物を、ハンスのほうに差し出した。 「これは私からのプレゼント。前にライキリを見つけてくれた、そのお礼と、あとは……誕生日の――ハンス、この間、誕生日だったでしょ――?」  まったく唐突なことで、素直に反応ができなかった。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加