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「あのときはちょっと、焦ったけどね」
そしてユキは、瞬間的に目を細くした。
「ハンスは貴族のお嬢様とデートの途中だったみたいだし……」
じっと、ねっとりとした視線を浴びた。
喜びから一転、この上なく怖い。プレッシャーがすごい。背中のほうにゾクゾクとしたものが伝わってくるように。
「い、いっておくけど、あのときも話したように、別にデートとかじゃないぞ? 俺も純粋に武器を探しに歩いてたんだ」
「ほんとうにぃ……? でも彼女、なんだかずいぶんとおめかししてたみたいだけどー」
まるで信用していない声音だ。
これは早急に話題を変えたほうがよさそうだ。
「本当だよ。――ああ、それでバジルさんは、俺を二週間待たせるようなことをしたのか!」
その間にいい武器との出会いがある、というようなことをいっていたのが、まさに今と状況いうわけだ。その期間で、この魔剣を製作していたのだろう。
実際にあれから二週間ちょうどなので、かなり頑張ってくれたらしい。
いやそれか、ここまでが彼の描いたストーリーだったのか――?
「バジルさんの察しのよさには驚いたけど、おかげで予定どおりにいってよかったかな。あのときハンスがもし新しい剣を買っちゃったらどうしようかって、不安だったんだけどね」
そういえば、あの日ユキの去り際に、バジルは何か声をかけていた。あのときは何も思わなかったが、そこですでにバジルは、ユキの注文した武器の受け取り主がハンスになると察知したのだろう。
剣のサイズが特殊だということも、その予想を後押ししたのかもしれない。バジルほどの腕と知識があれば、特殊品の形やサイズですらも、データとして頭に入っているのかもしれない。
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