終章

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「でもそれは、要は一時的な器になったみたいな物なんだろ? 力を取り込んで引き継ぐための器というか……」  ここから先のことは、それを託されたユキにしか、わからないことなのかもしれないが――。  そしてこの予想は、ハンスなりの解釈でしかない。  自分に都合のいい、御都合主義の、そういう解釈でしかなかった。  ハンスの質問には答えることなく、ユキは話を続けた。 「たぶん……レジーナ様には、初めからこの未来がぼんやりと見えていたんじゃないかなと思う。具体的にどこまでかはわからないけど、私を助けて命を落とすことも、戦場に出ることを決めたときから、予期してたんじゃないかって、今は思うんだ……。だからこれは――私が決めたことでもあり、レジーナ様が決めたことでもある」 「……」  神なる力を授かったレジーナの意志による決定とは、それはもう、『ノアの意志』とほとんど同義といってもいいのかもしれない。  つまりそれは――ユキはノアによって、選ばれたということなのか?  あのときの一連の出来事は、偶然そうなったのではなく、『ノアの意志』による決定だとでもいうのだろうか。  この世界中に、数多といる人間の中で、他の誰でもなく、目の前にいるこのユキが、ノアによって選別されたのか――?  「ハンス」  ユキが、ハンスの名を呼ぶ。  そして、ついに――ユキはその言葉を口にした。 「私は、神徒になります――」
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