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「……ちょっと、お疲れなのか?」
彼女の顔を見て、最初に思ったことはそれだった。
なんというのか、全体的に顔色が優れておらず、普段よりも暗い表情に見えたからだ。
疲労が表情に滲み出ているようだった。少なくとも、いつもの活発ではきはきとした雰囲気はなかった。
「ええ、まあ、少し……」
彼女は微妙な笑みを作った。
「ここには何のご用で?」
ここに来た理由を説明して、待ち時間なのだということを伝える。
「それなら、休憩室でもご用意しましょうか?」
「え、そんなところがあるのか?」
「まあ、普通なら一般人は入れないのですが、ここの五階ならわたくしの主戦場ですので、融通は利きますよ」
ありがたい申し出だった。が、シャーロットはいいのだろうか。
「でも、シャーロットのほうはなんだか忙しそうだけど、いいのか?」
わざわざ手を煩わせるのも忍びない。ただシャーロットは、緊張を解きほぐすように、わずかに表情を緩めた。
「ええ、わたくしも少し、休みたい気分でしたので。それに――ちょっといい機会なので、ハンスさんに聞きたいこともありますし……」
そういってくれるならと、素直にお言葉に甘えることにした。
それにしても、聞きたいこととはなんだろう――?
「あ、その前に――少しお待ちください」
シャーロットは、魔装管理課の受付に歩いていって、何やらカードのようなものを職員に渡していた。それだけで用事は終わったようで、すぐに戻ってきた。
「じゃあ、行きましょう」
魔装管理課を出て、例によって箱に乗る。そして上昇を始めた。
吹き抜けの空間には、いつものように動くと同時に強い風が生れた。
幸いなことに、シャーロットはブレイバーの軍服ではなく、タイトな黒のスカートなので、ソフィと来たときのように風を気にする必要はなさそうだった。
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