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五階に着くと、前に足を踏み入れたときと同じように、廊下を兼用するエントランスが広がっていて、その先にはガラス張りの研究室がある。
シャーロットが持っているカードキーを機械にかざすと、ガラスで仕切られた部屋への扉が開かれた。
研究室に入ってすぐを左に折れると、その通路の先には、ブレイバーの食堂である本館のカフェをかなり小規模にしたような部屋があった。
といっても、カフェのような飲食の施設があるわけではなく、飲み物を保存するための魔装冷蔵器具と、あとは熱湯を保存しておくためのポットが置かれているくらいだった。
その他はテーブルと椅子が規則的に並べられている。そのうちの一つに、シャーロットとハンスは座った。
「コーヒーを注いできますわ」
シャーロットが二人分を準備してくれるらしい。魔研のエースに雑務をさせるのは申し訳ないが、その魔研の施設だということもあり、彼女に任せることにした。
ほんの一分くらいで、彼女は帰ってきた。
「どうぞ」
インスタントですが、とシャーロットはつけ加える。
「ああ、ありがとう」
こんなにも手軽にコーヒーが作れてしまうとは、やはり先端技術というものは恐れ入る。
一口飲んでみると、適度な苦味が舌の上を通り抜けた。味や風味も、悪くない。
席についたシャーロットは、コーヒーを口に運んでから、話を始めた。
「ブレイバーのほうは、先日は大変でしたね……」
シャーロットがいわんとしていることはすぐに理解できた。
クラッドストン学園内に仮面の侵入者が現れ、神器である『黒曜』が奪われた事件のことだろう。
犯人は以前と同じような、仮面をつけたの人物だった。
ハンスは都合二回、仮面の人物と対面したわけだが、今回の犯人が彼らと同一人物なのかは不明だ。その素性については、いまだ明らかになっていない。
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