一章 未完の新兵器

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 ということは――。 「つまりやつらには、アルディスの戦力を削ごうという意思はなかった――?」  こくりと、シャーロットは首を折った。  あらためていわれると、そうだ。その通りだ。アルディスに敵対するつもりならば、その軍事力を落とすことが目的であるなら、魔研を潰すのが手っ取り早いはず。しかし、そうしなかった。 「となると、必然的に……」 「そうですわ。少なくとも彼ら仮面の組織は、ゼノビア軍に関わる人間ではない、という仮説が立てられます。もしゼノビア軍の隠密のような組織ならば、勝利のために魔研を狙う選択を取るはずですから。――要するに、彼らはアルディスの戦力自体には、関心を示していない。戦争の結末に関与するつもりもない。――そういうことでしょう」 「戦争の結末、か――。ならいったい狙いはなんなんだ? ――って、そうか。まあ、それは神器なんだろうけど」  神器を集めているが、国家間の情勢には無関心――。 「ええ。彼らはただ忠実に、世界中に散らばる神器だけを収集している組織のようですね。アルディス軍が弱体化しているこのタイミングが、強奪にベストな時期と判断したのでしょう。その目的は不明ですが、もともと神器にはいわくめいた伝説が多々ありますし」  その話は以前、ハンスも聞いている。たしか、あの胡散臭い男、フィレイから教えられたのだったか――。 「古代にあったマナが封印されているという話は聞いたな」  いや、フィレイではなく、ユキから聞いたのか。  祝賀祭の夜に。ノアに満ちていた莫大なマナを封印するため、アイリスとリエスは『十の神器』を作り出した、と。  しかし現在は、神器は七つだといわれているらしいが。  取って置きの情報だったつもりだが、しかしシャーロットは表情を崩さない。少し拍子抜けではある。  そもそも周知の事実だったか。
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