一章 未完の新兵器

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 ソフィにしても、では一族に危険があるからといって、家を出ることはないのだろうと思う。家族を置き去りにしたままで自分だけ避難するということを、ソフィは選択しない気がする。  ハンスは、非公式という扱いではあるが、ソフィの使用人であるジョウ・アインスフェルトから、彼女を守ることを頼まれている。  ハンスとしてもそのつもりだ。何かあれば、即座に駆けつける覚悟はある。ソフィが傷つくところを見たくはない。 「ヤツらに、事前に圧力をかけられればいいんだけどな……」  しかしながら、具体的にどうするのかといわれれば、効果的な案は導き出せなかった。  少なくとも、ハンス個人にできることではない。戦時でなかったにしろ、貴族であり、しかも女の子のソフィに、四六時中くっついているわけにもいかない。  彼女は今、アルデウトシティとアルディストンのちょうど中間地点あたりに急遽設置された拠点に滞在している。『首都防衛AL作戦』による負傷者を受け入れるために組織された部隊だ。  しかしながら、今後の戦況しだいでは、そこも安全とはいえなくなるかもしれない。彼女が撤退となる可能性もなきにしもあらずだ。  ソフィが拠点を撤退して、オールティストンの屋敷に戻ってくるその前に、何らかの対策練られればいいのだが。  早い話、神器をオールティストン一族の領地から他の場所に移すという手もあるが――ハンスのような一般人が、そこに口を出せるわけもない。  「アルディスも状況はよく理解できているでしょうから……。彼らに任せるしかないという状況です」  そういって、シャーロットは、ソフィに関する話を締めた。彼女としても、自分たちにどうしようもないことは理解しているのだろう。 「今はそれ以上に、アルディスは苦境に立たされていますからね……」  その通りだ。  アルディスという国が滅んでしまっては、ソフィの安全もなにもなくなってしまう。
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