一章 未完の新兵器

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 万が一の話だが、ゼノビアによってアルディスが制圧されてしまった場合、権力を持つ貴族の存在は、ゼノビアにとっては面白くないだろう。  国民への見せしめのためにも、真っ先に貴族に処刑の命が下る可能性もある。  そんなことは絶対に許されない――。 「まるで世界が……『ノアの意志』が、そう仕向けているかのようだな……」  アルディスの滅亡を望んでいるかのように――。  最悪のニュースが続いているのが現状だ。  そうでなくとも、ゼノビアが攻勢を強めているこのタイミングでの襲撃というのは、彼ら仮面の組織としては狙い通りだったのだろう。  アルディス軍は現状、ゼノビアの最終兵器を前に、成すすべのない状況が続いている。  あのゼーファスが刺し違えたあの一機以外にも、自走兵器を備えていたというのは誤算だった。  しかもゼーファスによってダメージを負った一機も、故障はあれど完全なる破壊には至っていない。いずれは修理され、戦力として再び戦場へと舞い戻ってくることだろう。  修理にどれくらいの時間を要するのかは不明だが――。  アルディスのブレイバーも、ずいぶんと人数を減らしてしまった。  明日には次の誰かが、その命を落とすかもわからない。もしかすると、身近な人間がそうなるかもしれないし、自分自身がそうなるかもしれない。  もし、アルディスが陥落するような事態になれば、このシャーロットでさえも例外ではないだろう。  彼らは確実に、アルディスの核となる魔法研究者を野放しにはしないからだ。必ずその芽を摘むか、もしくは自軍の戦力強化のために利用するに違いない。  ゼノビア人に憎しみを抱くシャーロットとしては、それはこの上ない屈辱だろう。もし敗戦した日には、それを理由に自害するのではないかとすら、そんな不吉な想像までもが、頭に浮かんでくる。
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