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「シャーロットは、この戦争中はずっと研究所の中なんだよな?」
ブレイバーとしての顔も持つ彼女だが、疲れの滲み出た表情を見るかぎり、今は主戦場のほうで多忙を極めているようだ。
「ええ、そうですわ。そろそろ――そろそろ、ですわ。やっと、研究のほうも、佳境に入っていますので……」
シャーロットは、疲れのこもった、感情的な声音でいった。
それはおそらく、彼女が前に話していた、『レベル4』をも越えるという魔法のことなのだろう。
ひとたび発動すればゼノビア軍を一掃するかもしれない、どれほどの威力を誇るかもわからない、いまだかつてない破壊力を持つという究極の魔法だ。
「ハンスさんは、神徒レジーナ様が参戦されることは、もうご存じですよね?」
「ああ、もちろん。ブレイバー側にも正式な通達があったからな」
それだけでなく、国際的にも、正式な発表がすでに成されているはずだった。
ついにこの戦争に、化神の力が使われるときがきてしまったのだ。できることならば、手を煩わせることをしてはならなかった、いわばアルディスにとっての最終兵器ともいえる力だ。
詳しくは知らないのだが、強大な能力を秘める神徒レジーナがその力を使えば、おそらくアルディス軍は息を吹き返すことになるだろう。
しかしそれは、ゼノビア側にもその力――つまり同じく彼らの化神の力を行使させるきっかけを作りかねない。
もしそうなってしまったら、化神どうしのぶつかり合いによって、とんでもない被害が出る可能性もある。
そうなると、もはや国どうしの争いの域を越えて、ノアの大地そのものがダメージを負うかもしれない。どれほどの規模の戦いになるのかも想像がつかない。
『ノアの意志』はそれを容認するのだろうか――。
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