DaybreakersⅤ ― 未完の新兵器 ―

一章 未完の新兵器

「以前にも話したかもしれませんが、レジーナ様は『究極魔法』の研究にも携わられていました。その彼女が魔研を離れて戦場に赴くということは、つまりそういうことです」
「――そういうこと……というと？」

　間の抜けた質問をしてしまったのか、シャーロットは、わずかに呆れに似た反応をしたように見えた。

「究極魔法の実用化が近い、ということですわ。実際――試作型はすでに完成しました……。その力を最初に使うのは、化神のお二人のどちらかです。――まあ、今回の発表を見る限り、レジーナ様ということになるでしょうね……」

　試作型の完成。
　そんなものが作られていたのか。

　そしてアルディスはその力を、行使しようとしているということか――。

　試し撃ちというほど、楽観的なわけではないだろう。力を持つ者が使用するというのは理にかなっていると思う。

　神徒レジーナならば、試作型とはいえ、ゼノビアの自走兵器を破壊できるかもしれない。それを期待する気持ちを、ハンスは胸の内に感じたのがわかった。

　あの自走兵器は、生身の人間が戦うには相手が悪すぎる――。

　ゼーファスを失った戦いで得た教訓だ。

　少なくとも、遠距離から効果的な攻撃ができることが最低条件だ。攻撃面ではなく、防御面の理由からである。でないと、こっちの身体が木端微塵になる。

「やっぱり究極魔法って、一介のブレイバー程度じゃ操れない力なのかな？」

　不特定多数の人間に扱うことができれば、戦力の飛躍的な上昇につながるのではないか、という安直な発想が生まれたのだ。

　しかしそんな上手い話はなく、重々しくシャーロットは頷く。