一章 未完の新兵器

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「少なくとも当面は、そうなるでしょうね。まず、究極魔法の使用には莫大なマナと魔力が必要となりますわ。確実にそのエネルギーをコントロールするためには、やはり化神クラスの力が必要ということです。第二に、使用者自身の安全性にも懸念があります。化神クラスでなければ、使用者が命を落とす可能性も否定しきれません。――強大な魔法であるがゆえに、おいそれと実証実験をすることもできなかったものですから……。ある意味、使用はぶっつけ本番ということになるでしょうね」 「アルディス軍は、もちろん、使おうとしてるんだよな?」  最初の試作型完成の流れから聞く限り、使用を前提とした表現のように思えたのだ。 「それは、おそらく今回出陣するレジーナ様の功績しだいでしょうね。レジーナ様の力で、ゼノビアの戦力の大部分を奪うことができれば、究極魔法を使う必要はなくなるかもしれません」 「なるほどな……」  そういう彼女の表情は、複雑に揺れ動くそれに見えた。  シャーロットの本心は、はたしてどちらなのだろう?  そんなことが頭によぎった。  究極魔法が、使われることを望むのか、それとも、使われないまま戦争が終結することを望むのか――。  あの、バンデンタウンの任務のときの、ゼノビア兵に見せた彼女の憎悪の姿が嫌でも思い出される。  予想外のショッキングな映像として、どうしてもハンスの頭から離れないのだ。シャーロットのイメージの一つを決定づけた出来事といっても過言ではない。  彼女は自分の故郷と家族を奪ったゼノビア軍を憎んでいる。  そのゼノビア軍を滅ぼすための魔法を開発することが、研究者としての目的であり夢である、というようなことを以前いっていたほどだ。きっと今も、その心は変わってはいないのだろう。 「ゼノビアの兵器の話は、聞いてる? 魔研にも情報は入ってると思うけど……」 「もちろん、聞いています。小隊程度ではとても相手にならない凶悪な兵器のようですね。――バーティストン一族のゼーファス様が亡くなったことも、もちろん……」  シャーロットは表情を暗くした。
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