一章 未完の新兵器

25/42
前へ
/310ページ
次へ
「ああ、そうか……。貴族どうしだもんな。関わりもあったのか」 「まあ、それなりには。貴族の集まる会があれば顔を合わせますし……」  シャーロットはそこで口をつぐんだ。あまり亡くなった者の話をあれこれと聞くものではないか。 「彼だけでなく、どうやら死者もかなり増えてるようですわね。わたくしも、こんな場所で研究していることが不思議なくらいですわよ。早ければ一週間後には、この国はなくなってしまっているかもしれないというのに……」  あらためて、そう言葉にされると、実感が湧いてくるというものだ。そう、その通りで、アルディスは未曾有の危機に晒されているといっていい。 「だな。そういう意味ではもう、化神に頼らざるを得ないのかもしれないな。いくら人間を増やしたにしても、あの兵器を止めようとすればそれなりの犠牲が伴う……」  それこそゼーファスのように。彼の死は序章でしかなかったのだ。  それがこの数日で、如実に現れる結果となっている。もうこれ以上、むやみに戦力を失うわけにはいかない。 「でも究極魔法ならば――それも可能だと思います」  シャーロットは、言葉に力を込めていった。  まだあの自走兵器を直接その目で見ていない彼女だが、それを語る口調に迷いのようなものはなかった。つまり究極魔法は、それだけの規模と破壊力を有する魔法だということだ。 「でも、完成はまだ先なんだろ? ――具体的には、どれくらいの効果範囲になりそうなんだ?」  あの兵器を破壊できるというからには、たとえばこの魔研の建物くらいなら、崩壊させることができるかもしれない――。  想像できるのは、それくらいだ。
/310ページ

最初のコメントを投稿しよう!

12人が本棚に入れています
本棚に追加