一章 未完の新兵器

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 シャーロットは逡巡したようすを見せたが、それほど間を開けることもなく、こう告げた。 「これは推定の数字なのでお教えします。……現在の想定では、だいたい半径五キロメートルといったところでしょうか」 「ん? 半径……五キロ」  咄嗟に想像がつかなかった。自分の予想とはまるで違う角度から、不意討ちされたかのようだった。  やがてその意味がわかると、にわかに全身に寒いものがほとばしった。 「――五キロって、本気なのか」 「もちろん、研究者として、嘘はありません」 「ヤバいな……」  上手い言葉が見つからない。 「あくまでも、インパクト系列のように、単純に爆発させたとしたら、そうなるのではないかと予想されている、ということです」 「でも、それだと仲間も巻き込むんじゃ……」  五キロ圏内は無条件に被害範囲となるわけだ。 「そうです。だからこそ、その運用には慎重になっているんです。たとえばショット系列のように飛ばしたり、ビームのように光線状にしたりだとか、そういう対処方法を検討中ですが、まだまだ煮詰まっていません。実用化に向けての課題というのは、まさしくその部分なんですわ」  魔法の開発には、そういう要素もあるのかと、勉強になった。たしかに実戦で使える形に仕上げなくては、運用はできない。ただ作ったというだけではダメなのだ。  だからこそ、以前彼女から聞かされたように、改良や淘汰が繰り返され、その種類が絞られているのだ。 「――てことは、単純に爆発させるだけなら、今でもできちゃうってこと?」 「そういうことですわね」  にべもなく、にっこりと笑みを作ってシャーロットはいった。  なんというか、怖い――。  恐怖を感じる。  それを笑みをこぼしながらいうことも怖いのだが、何よりそんな強大な魔法の研究を、若干十六歳の彼女が担っているという現実も、なかなか堪らなく恐ろしいことなのだった。
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