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シャーロットは逡巡したようすを見せたが、それほど間を開けることもなく、こう告げた。
「これは推定の数字なのでお教えします。……現在の想定では、だいたい半径五キロメートルといったところでしょうか」
「ん? 半径……五キロ」
咄嗟に想像がつかなかった。自分の予想とはまるで違う角度から、不意討ちされたかのようだった。
やがてその意味がわかると、にわかに全身に寒いものがほとばしった。
「――五キロって、本気なのか」
「もちろん、研究者として、嘘はありません」
「ヤバいな……」
上手い言葉が見つからない。
「あくまでも、インパクト系列のように、単純に爆発させたとしたら、そうなるのではないかと予想されている、ということです」
「でも、それだと仲間も巻き込むんじゃ……」
五キロ圏内は無条件に被害範囲となるわけだ。
「そうです。だからこそ、その運用には慎重になっているんです。たとえばショット系列のように飛ばしたり、ビームのように光線状にしたりだとか、そういう対処方法を検討中ですが、まだまだ煮詰まっていません。実用化に向けての課題というのは、まさしくその部分なんですわ」
魔法の開発には、そういう要素もあるのかと、勉強になった。たしかに実戦で使える形に仕上げなくては、運用はできない。ただ作ったというだけではダメなのだ。
だからこそ、以前彼女から聞かされたように、改良や淘汰が繰り返され、その種類が絞られているのだ。
「――てことは、単純に爆発させるだけなら、今でもできちゃうってこと?」
「そういうことですわね」
にべもなく、にっこりと笑みを作ってシャーロットはいった。
なんというか、怖い――。
恐怖を感じる。
それを笑みをこぼしながらいうことも怖いのだが、何よりそんな強大な魔法の研究を、若干十六歳の彼女が担っているという現実も、なかなか堪らなく恐ろしいことなのだった。
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