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「なるほど『究極魔法』か。たしかに、究極だな……」
それ以上にいうべき言葉がない。それはもはや、魔法と呼ぶべきジャンルを逸脱しているのではとさえ、思ってしまう。
そこまでいくと、殺人兵器だといっても過言ではないような気がする――。
それこそまさに、ゼノビアが作り出したあの自走兵器のように。
そんなことは、ゼノビアへの負の感情を募らせるシャーロットには、口が裂けてもいうことはできないが。
「『ラグナロク』、ですわよ」
唐突にシャーロットが発したワードは、まるで他の言語のように、頭に入ってこなかった。
「え、ラグ――?」
「ラグナロク。究極魔法の正式名称です」
ラグナロク。
どことなく、荘厳とした響きのように思えた。
通常魔法のような、ヒートやリキッドといった、マナの属性を表す言葉は使われないらしい。そのあたりも、この『ラグナロク』の特殊性を示しているのといえる。
「――そのラグナロクの手を借りず済むように、神徒レジーナ様に戦いを終わらせてほしいもんだな」
何気なく、そう口にする。
しかし、シャーロットの意見は違っていた。
「そうですか? わたくしとしては、せっかく開発したのですから、究極魔法の威力も試してみたいところですが」
まるで何でもないことのように、シャーロットはいった。淡々とした中に、わずかな苛立ちのような印象を感じた。
新作の料理の味見を楽しみにでもするかのような、そんないいかただった――。
ただこれは、そんな微笑ましい家庭的で日常的な実験ではない。
それによって多数の死者が出るのだ。戦場となるアルデウトシティの街も破壊されるだろう。
『ラグナロク』とは、そういう魔法だ。
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