一章 未完の新兵器

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「なるほど『究極魔法』か。たしかに、究極だな……」  それ以上にいうべき言葉がない。それはもはや、魔法と呼ぶべきジャンルを逸脱しているのではとさえ、思ってしまう。  そこまでいくと、殺人兵器だといっても過言ではないような気がする――。  それこそまさに、ゼノビアが作り出したあの自走兵器のように。  そんなことは、ゼノビアへの負の感情を募らせるシャーロットには、口が裂けてもいうことはできないが。 「『ラグナロク』、ですわよ」  唐突にシャーロットが発したワードは、まるで他の言語のように、頭に入ってこなかった。 「え、ラグ――?」 「ラグナロク。究極魔法の正式名称です」  ラグナロク。  どことなく、荘厳とした響きのように思えた。  通常魔法のような、ヒートやリキッドといった、マナの属性を表す言葉は使われないらしい。そのあたりも、この『ラグナロク』の特殊性を示しているのといえる。 「――そのラグナロクの手を借りず済むように、神徒レジーナ様に戦いを終わらせてほしいもんだな」  何気なく、そう口にする。  しかし、シャーロットの意見は違っていた。 「そうですか? わたくしとしては、せっかく開発したのですから、究極魔法の威力も試してみたいところですが」  まるで何でもないことのように、シャーロットはいった。淡々とした中に、わずかな苛立ちのような印象を感じた。  新作の料理の味見を楽しみにでもするかのような、そんないいかただった――。  ただこれは、そんな微笑ましい家庭的で日常的な実験ではない。  それによって多数の死者が出るのだ。戦場となるアルデウトシティの街も破壊されるだろう。 『ラグナロク』とは、そういう魔法だ。
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